2008 東京新聞

民族楽器の音で元気に 高齢者施設を回る米国人ミュージシャン
文/飯田克志

京都市在住の米国人ミュージシャン、ロビン・ロイドさんは、各地の高齢者施設で音楽療法に取り組む。民族楽器で奏でる音楽で交流を深めている。今秋、出会った高齢者の“素顔”を書き留めた絵本詩集を出版した。

ロビンさんは尺八と三味線を習うため23歳のときに来日した。アフリカの民族楽器で、木箱に取り付けた金属の鍵盤を親指で弾いて奏でるカリンバなどを用いた音楽療法に取り組んでいる。

民族音楽に興味を持ったのは少年時代。「14、15歳のころから、西洋音楽以外の民族音楽に興味を持って、世界地図を広げ、気になった国の音楽について図書館に行き調べていた」。

来日後も世界約50カ国を訪れ、自宅にある民族楽器は数百点にもなる。

音楽を使って相手を癒やしたり元気づけたりする音楽療法と出会ったのは「民族楽器を楽しんでもらおう」と企画したワークショップ。そこでは演奏体験だけでなく、民族楽器をめぐる旅で目撃した、人を癒やす音楽の力についても語っていた。

参加した音楽療法の専門家から「あなたの話していることは音楽療法そのものだ」と専門学校の講師にと誘われた。

アフリカなど再訪し、音楽療法という視点で演奏について学び直した。現在の音楽療法も学びたいと高齢者施設や障害者施設で行われる実践も見学。そこで、自らのカリンバの演奏で、子どもたちが元気になる体験もして、この道に入った。現在は全国の高齢者や障害者施設を回る。

訪れた施設では、季節に合わせ童謡を一緒に歌い、手に持てるシェーカー鈴、太鼓などの民族楽器をそれぞれの高齢者に渡す。「珍しいからと音を出し始め、楽器を交換し合う。リズムが出てきたところでカリンバを合わせるように鳴らすと、優しく盛り上がる」。

高齢者のやってみたいという気持ちに合わせる。「待つことを大切にしている。自然に童謡とかのメロディーになって、一緒に歌うこともある」「リズムに乗ると、普段は上がらない手が上がったりする」。

一般向けに通常のコンサートも開くが、施設訪問は別の手応えを感じている。声にはならないけれど、口を動かして歌う高齢者、病気から回復する高齢者の姿を見てきて、「音楽療法で体調が良くなる。役立っていることがうれしい」と実感している。

これまで出会った高齢者の姿を長年書き留めてきた詩99編を絵本詩集「HAPPY BIRTHDAY MR.B!」(コンテンツ・ファクトリー刊)にまとめた。

 

Dさんは体操嫌い

でも好きな音楽が流れると

すぐに陽気に踊りだす!
みましたか?

I 氏が大喜びしていたあの笑顔

通路で誰かが立ち止まり

名前を読んでくれたんだって

 

高齢者の喜怒哀楽を俳句のようにつづる。「『高齢者だから』とみんなひとまとめに見てしまいがち。詩を通じて、一人一人の思いに寄り添えるようになってもらえたら」。