Desert Horses

あなたは、ナミブ砂漠の真ん中でギラギラと照りつける太陽からまぬがれて辛うじて立っている。朝日と夕日を迎えるのに砂漠ほど美しい場所はないが、今は日盛り。太陽は砂の上に容赦なく照りつけ、目もくらむばかりだ。エネルギーが消耗し、体の動きはにぶくなり、頭は朦朧としている。こんな時、水は喜びであり救いでもある。

 

ここに生き物がいるなんて考えられない。ここはエキゾチックなアラブ商人やラクダの隊列の国ではない。では、遠くで動いて見えるあれはいったい何だろう?そっと砂を踏みながら、時々後ろ脚を蹴り上げて、まるでダンスをしているようだ。地平線の上に見える優雅な黒い影。だんだん近づいてくる。一頭、さらにもう一頭。馬たちだ。

 

馬たちは植民地時代の贅沢の名残だと言われている。この砂漠の外れ何百キロのところに、馬を愛するボン・ウルフという裕福な男爵が暮らす広大な牧場があった。男爵はヨーロッパへ里帰りをするため牧場を離れるが、そのまま祖国で亡くなる。1915年のことだ。…その後、彼の妻ジャイタは、砂漠での孤独な暮らしに耐えられず、邸宅と土地を売却した。では、馬たちはどうなったのだろう?使用人たちも主人同様、馬を愛しはしたが、彼らを引き取れるほど裕福な者はいなかった。1920年、残っていたナミビア人の使用人によって最後の貴重なエサである穀物袋の中身が撒き与えられた後、牧場のゲートは開かれた。

 

馬たちは遥か離れた生まれ故郷からこの地へと運ばれてきて、砂漠の藪やそこに実る種子を食べて生きることを覚えた。藪の根から水分を補給し、見事に生き抜いている。世界で唯一の砂漠に生きる馬。
ほら、あそこ!馬たちがいる。砂漠を駆ける姿は強く、美しく、自由だ。