The New Basket ~ 魚のかご

それはまるで、神様が寝床につく前に、やわらかくてうすい真綿の毛布を川の上にしきつめたかのような光景です。翌朝早く、年季もののカナカスピのカヌーで川を下り、仕掛けておいた魚の網を見に行く時には、霧はさらに薄いベールに変わっています。太陽が高く昇る頃には、川下までくっきりと見渡せますが、すぐにまた日が傾くと、例の毛布が敷きつめられ始めるのです。アマゾンの長い夜は、虫たちの声が響き、こだましあいます・・・そして人々は夢の中へ。

 

朝、川岸の木々の間から立ち上る一筋の煙は、大漁の証しです。夜明けから働き始めている漁師とその妻は、カヌーを岸に引上げ、簡単な朝食の用意をしています。小さな鉄鍋に米を炊き、その朝とれたての魚をたき火で焼きます。森でとれるプランテイン(料理用バナナ)を副菜にして、朝食のできあがり。

 

 

朝食を終えると、ふたりはジャングルの奥へとすすみ、かごの材料になるタムシと呼ばれるヨシを探します。切りたてのヨシの束を袋に詰めて岸に戻ると、漁師の奥さんは座って、その日獲れた魚を入れるのに頃合いの(大きすぎず、小さすぎない)かごを編み始めます。編みあがったまっさらのかごに大漁の魚を移しかえ、かごが一杯になると、ふたりはカヌーに乗り込み、川上に向かって、朝よりもずっと長く大変な家路につきます。

 

霧の毛布がやわらかく川を包む頃、ようやく漁師は家に戻り、満天の星の下、たくさんの家族たちに昔話を始めます。真新しいかごにあふれんばかりの魚を囲んで、みんなの顔に笑みが浮かびます。豊かな天の恵みに感謝しつつ・・・・・・。

 

 

 

ペルー、アマゾンのヤナヤク川にて。
カナカスピはアマゾン川流域に生息する木の名前で、カヌーを作るのに最適とされる。